大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成9年(ネ)1949号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

一  控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。被控訴人は、控訴人に対し、一二七万八二四一円及びこれに対する平成八年六月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。

二  当事者双方の事実上及び法律上の主張は、原判決事実摘示(原判決三頁七行目から一三頁九行目まで)のとおりであり(ただし、原判決五頁二行目、三行目及び九行目の各「当庁」を「東京地方裁判所」に改める。)、証拠の関係は、原審記録中の証拠目録に記載のとおりであるから、いずれもこれを引用する。

三  当裁判所も、被控訴人の本訴請求を正当として認容し、控訴人の反訴請求を失当として棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加訂正するほかは、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一四頁一〇行目の「負っている」を「負っており、年間返済額は一二万円である」に改め、一二行目の末尾に続けて「しかし、控訴人は、当時既に富士銀行に対する債務の支払を遅滞していたほか、平成三年分以降の国民健康保険料も滞納していた(甲第二、甲四号証)。」を加える。

2  原判決一五頁一一行目の「約半年勤務した後」から一二行目末尾までを「したがって、収入も入社時に比べてそれほど増えなかったので、平成六年八月三一日、退社した。控訴人の平成五年のイラストレータとしての収入は、源泉徴収税控除後の額が一〇五万円余であり、平成六年のそれは九〇万円余であった。また、そのころの控訴人の生活費は、家賃を含めて一か月約一七万円であった(甲第二、第一四号証、乙一五号証の三ないし八、第一六号証の一ないし六、第一八号証、控訴人本人の供述)。」に改める。

3  原判決一五頁末行から一六頁六行目までを次のとおり改める。

「7 右認定のとおり、控訴人は、平成五年一一月一九日当時においては、安田生命に保険勧誘員として勤務していたが、手取りの月収額は一三万円程度であったので、イラストレータとしての収入を加えても、これから生活費やイラスト作成等に要する諸経費を控除すれば、他社に対する借入金債務の毎月の弁済額約一二万円すらも支払えない状況にあったことは明らかであり、当時既に富士銀行に対する借入金債務の支払を遅滞していたほか、平成三年分以降の国民健康保険料の支払も滞納していたのである。また、控訴人は、当時既に安田生命に勤務していて、保険契約を獲得しなければ収入額が増えないことも、保険契約の獲得は容易でなく、また、確実に獲得し得るものでないことも、分かっていたはずである。」

4  原判決一七頁一行目の「購入は」の次に「悪意による」を加える。

四  以上の次第で、右と同旨の原判決は、相当であって、本件控訴は、理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき、民事訴訟法九五条及び八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 清永利亮 裁判官 小林亘 滝澤孝臣)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例